JUST THE WAY YOU ARE


【 月島 15:18】

 つきのいのちはなんだろううまれあいしいきてきえゆく


「月島さん何してるの?」
隣の車輌に行ったきりの月島を探して、汐留が連結部分のドアを開けた。
「ああ、すみません、次、私で降ります」
振り返った月島は鉄黒の袴に胡粉色の袷、それと同じ地の羽織という出で立ちだった。車輌を移っていたのは着替えのためだったらしい。
 色調こそいつもの制服と同じだが、まるで違う雰囲気の彼に汐留はどきりとした。
「何で和服?」
「バランス、でしょうか」
「バランス?」
えっ、と何か言おうとする汐留に月島は言葉を被せる。
「いや、勝負服でとでも言っておきましょうか」
そしてすまし顔で、牡丹色の襟巻きをふわりと襟元に巻いた。
「あ、そのマフラーの色、僕たちの色だね」
「そうですね。身につけていると心強い気がしますので」
お守り代わりにつけて行きます、と、謎かけのような呟き。
 お守り?
 月島さんでもお守りに縋りたくなることってあるの?、と汐留が訊こうとしたとき、車両がスローダウンし、月島駅のホームでドアが開いた。
 水面を模した水色のホームに、したたるような男ぶりの月島が降り立つ。
「では、いってまいります。私のお手伝いが必要になったら、遠慮なく連絡くださいね」
「うん、ありがとう月島さん。いってらっしゃい」
再び車両は加速して、汐留は前方車両に戻った。そこでは窓に肘をついた新宿が、改札への階段へ向かう月島の背中を眺めていた。
「あいつ、めかし込んでどうしたんだ?」
「…勝負服だって言ってたよ」
「ふーん。本気になると一番コワイのは月島かもなぁ」
「?」
不思議顔の汐留に、新宿は困ったような笑みを見せた。
「あーっ、今『これだからお子ちゃまは』って思ったでしょ!!」
「思ったよ、お・子・ちゃ・ま!!」
わーん、と新宿にとびかかっていくお子様を横目に、都庁は後部車両へ両国と六本木を探しに行った。
 まだ彼らはミラクル☆トレインに乗ったままのはずだ。

To be continued.

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